2015年10月15日木曜日

「Live in Studio 1976」アレア



イタリアのみならず本家イギリスのトップバンドと比べても、その図抜けたテクニックと強烈な個性で孤高の存在となっているバンドAreaの、TSI(Televisione Svizzera Italiana)出演時のライヴ映像です。1977年の映像という説もありますが、真実は不明です。

Areaの映像はいくつか残っていますが口パク&当て振りがほとんど。しかしこの映像はしっかりと生演奏をとらえているという点で、非常に貴重だと言えるでしょう。



[members]

Giulio Capiozzo(ドラムス、パーカッション)
Patrizio Fariselli(ピアノ、キーボード)
Ares Tavolazzi(ベース)
Paolo Tofani(ギター、シンセサイザー)
Demetrio Stratos(ボーカル、オルガン、パーカッション)

[setlist]
1. Luglio, agosto, settembre(nero)
2. Giro, giro, tondo


Luglio, agosto, settembre(nero)(7月、8月、9月〔黒〕)」は、言わずと知れたデビューアルバム「Arbeit Macht Frei」(1973)の冒頭曲。個人的にはやはり、この曲を初めて聴いた時の衝撃が忘れられません。「Giro, giro, tondo」は、この時期の最新アルバム「Maledett(呪われた人々)」(1977)から。

デメトリオ・ストラトスのボーカルの凄まじさは、声量がとか音域がとか声質がとかいったそれまでの自分の中の尺度を遥かに超えていました。最初は呆然。ギャグか?とさえ思ったものでしたが、聴いているとぐいぐい引込まれていったのを覚えています。

何だこのパワーは??それにバンドのアンサンブルもまったくスキがない。それどころか変拍子は変拍子なんだけど、民族音楽みたいな聴いたこともない変拍子で、さらにちゃんとロックしている! そしてメロディーも変だ。カッコ良くないしどことなく座りが悪い…でも不思議と説得力がある…。いや…、カッコイイかも…。

音楽を聴いてこういう衝撃を受けることは、そうはないだろうと思います。

デメトリオ・ストラトスがホーミーまでこなす実験精神に溢れたボイス・パフォーマーでもあるとか、バンドの曲はバルカン音楽の影響を受けているとかいうことは後から次第に分かってくるわけですが、それでもAreaがそれまでのバンドとは明らかに違う特別な存在であることには変りありませんでした。

こうしてあらためてLuglio, agosto, settembre(nero)(7月、8月、9月〔黒〕)」をライヴ演奏で聴いてみると、実に難しい曲であることがわかります。気を抜くとバラけてしまいそうなアンサンブルや緊張感を、Areaのメンバーたちは、必要以上に音を詰め込まずに(ここが並のバンドと違うところ)ガッチリキープしています。これは本当に凄いです。